もう誰かを愛せはしない
そう思いながら黙っていると、妬いていると肯定したらしい翔介が話し出した。



「ごめんね。お詫びにどっか行こう」

「は?授業は!?」

「授業よりメイサの方が大事」



私は授業の方が大事だよ!!


と、言い返してやりたかったけど渋々翔介について行く事にした。





何でかはわからないけど

翔介といたかった。




「どこ行きたい?カフェ?ゲーセン?」

「…どこでもいい」

「じゃあメイサのバイト先のファミレスでのんびりするか」



何であえてバイト先にするかな…

まぁ、いいけど。




ファミレスに入り席につくと、翔介はジッとこちらを見つめてくる。




「何?」

「いや…。何をそんなに怒ってるのかなって思って」



翔介はテーブルに並ぶ水を口に含みながら呟く。




「…ショウスケは高校の時、美人な人と付き合ってたんでしょ?なんで美人と付き合ってたのに、私なんかを好きになったの?私の事バカにしてるワケ!?」


「…何だよ、それ」



私の言葉が気に食わなかったのか、翔介は私の事を睨みつけてくる。




だって変じゃない。


美人な人と付き合ってたって事は綺麗な人がタイプってことでしょ!?



私は美人や綺麗の部類に入らないもの。




「あれは好きになった人がたまたま美人だったってだけだ」

「じゃあ私は?何で好きになったの!?」



こんな翔介を困らせる事、聞くつもりはなかった。




でも私ね、今度恋をするのなら私だけを深く愛してくれる人がいい。


誰かの代わりとしてなんか愛されたくない。




全てとは言わないから

私自身の何かを愛して欲しい…。




「俺は初めてメイサを見た時、惹かれたって思った。何に?って言われても困るけど、恋の始まりってそう言う些細なことなんじゃないかな」



さっきまで私を睨みつけていた翔介の顔は、いつもの人懐っこい表情に戻っていた。
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