もう誰かを愛せはしない
でもやっぱり彼氏と同じ学部っていいな。


前は美佳達に少し遠慮がちに講義を受けてたけど、今は翔介がいるから何も気にしないでいられる。



「次の講義まで時間あるし、控え室でも行く?」

「そうだね。廊下で騒いでたらまた怒られちゃうし」



美佳に促され、私達は控え室へと向かう事にした。



その時――…。




「…メイサ?置いてくよ〜」



少し前を歩く美佳の声を聞き流しながら私は

ある講義室の前で足が動かなくなった。




「…ライハ…」



ドアの隙間から覗く講義室の中では、医学部が何かの実験をしているようだった。


その中に礼羽の姿。




何で私は…


礼羽を見るとこんなにも胸が苦しくなるんだろう。




どうしてこんなにも

泣きたくなるんだろう…。





「どうしたの?亮太と川野先輩、先に行っちゃったよ」



その場から動こうとしない私を見た美佳は、私の視線の先に顔を向けた。




「あれ、神崎くんだ。久しぶりだね」



美佳はそう言うと虚ろな私の瞳を見つめた。


何かを察したのか、美佳は優しく呟いた。



「…メイサ?寂しいから、忘れたいからって誰かと付き合うのは間違ってるよ。
今は満たされていても時間が経てば、逆に虚しくなるだけよ」


「美佳?」


「私、メイサの親友だよね?だから私にくらい素直になってよ。…神崎くんが好きなんだって」



美佳…。

私にもわからないんだよ。




寂しいから翔介といるのか

まだ礼羽が好きなのか





礼羽の姿に反応するのはまだ想っているからなのか


別れ方が中途半端だったから未練が残っているだけなのか。




「…ごめんね、変な事言って。でも今は川野先輩の事だけ考えてあげなよ」

「…うん」



私は後ろ髪引かれながら、美佳と共に控え室へ向かった。
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