裏はないちもんめ〜禁じられた少女たちの遊び〜
 酸素が脳に回っていない。意識が朦朧としてきて、それでも足を止めるわけにはいかなかった。


 一直線の廊下を懸命に駆ける。


 そして。


「はぁっ、はぁっ……ただいまっ」


 現れた景色に、すぐ後ろに迫っていたカミサマがたしかに動揺しているのを感じた。


 もうこれ以上足を動かせない。


 限界を超えて倒れこむあたしの前には、血だらけになりながらも堂々とモップを担いだ遥が仁王立ちしている。


「――第2ラウンド開始」


 ニヤリと笑う遥の向こうには、ズタボロになった赤い着物が転がっていた。


 これから「弐」のカミサマを襲うのはこの町で1番の女だ。あたしはそんなカミサマに、少しだけ同情したのだった。
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