シンデレラの網膜記憶~魔法都市香港にようこそ
しかし、言い訳は必要なかった。ドアを開けて顔をのぞかせたのは、エラだった。
「ほんとにタイセイがいる!」
聞き覚えのあるその一声に、タイセイは泣きそうになった。エラに再び会えた喜びなのか、救助隊と遭遇した安ど感なのか。一方、立ちすくむタイセイを前にして、エラは初めて彼に出会った時と同様に、飛びついてほっぺにチュウしたい衝動に駆られていた。
そんなお互いの衝動をなんとか胸に抑えながら、しばし見つめあうふたり。だが、やはり拉致されている当人の方が、ふたりの置かれている事態を早く思い出した。
「エラ!監視がいるのに大丈夫か?」
「ええ、ぐっすりお休みよ」
見ると、監視がふたり、だらしなく床に倒れて昏睡状態にあった。
「監視に何をしたんだ?」
「今夜の夕食に眠たくなる薬を混ぜたんだけど…家に入ってびっくり、薬が効きすぎて死んでしまったかと心配しちゃったわ…へへへ」
眠たくなってソファーに倒れ込む暇もあたえないほどの強力な薬なのだろう。睡眠導入剤というよりむしろ気絶導入剤のレベルだ。エラはこんな危険な薬を、どこで手に入れることができたのだろうか。
タイセイは、頭を掻きながら平然と笑うエラを、驚きをもって見つめ直した。
初めて会って香港の街を歩いたときは、彼女はシンデレラのような切なさと繊細さを感じさせた。しかし、自分を救い出しに来てくれた今はどうだ。こんな状況下に臆することもなく、大胆に行動を起こす。シンデレラどころか、マーベリックのヒーローそのものではないか。
タイセイは突然エラを抱きしめた。エラは彼の突然の抱擁に驚くことなく、しっかりと受け止めた。タイセイと別れた4日前から待ち望んでいたものが、今ようやくエラの腕の中に届けられたのだ。
たった2秒だったのだが、ふたりは永遠とも感じる抱擁に酔いしれた。
「ハグもこれくらいにして…これからこの家を出てどうするのか言ってちょうだい」
今度は我に帰るのはエラの方が早かった。
「ああ…」
名残惜しそうに体を離すタイセイ。
「とにかく日本総領事館へ逃げ込もう」
彼はエラの手を取って、外に走り出た。
「こんな場所でタクシー捕まるかな…」
「大丈夫、車持ってきたから」
「えっ?」
「私が働いている家にあった車を、黙って持ってきちゃった」
「ほんとにタイセイがいる!」
聞き覚えのあるその一声に、タイセイは泣きそうになった。エラに再び会えた喜びなのか、救助隊と遭遇した安ど感なのか。一方、立ちすくむタイセイを前にして、エラは初めて彼に出会った時と同様に、飛びついてほっぺにチュウしたい衝動に駆られていた。
そんなお互いの衝動をなんとか胸に抑えながら、しばし見つめあうふたり。だが、やはり拉致されている当人の方が、ふたりの置かれている事態を早く思い出した。
「エラ!監視がいるのに大丈夫か?」
「ええ、ぐっすりお休みよ」
見ると、監視がふたり、だらしなく床に倒れて昏睡状態にあった。
「監視に何をしたんだ?」
「今夜の夕食に眠たくなる薬を混ぜたんだけど…家に入ってびっくり、薬が効きすぎて死んでしまったかと心配しちゃったわ…へへへ」
眠たくなってソファーに倒れ込む暇もあたえないほどの強力な薬なのだろう。睡眠導入剤というよりむしろ気絶導入剤のレベルだ。エラはこんな危険な薬を、どこで手に入れることができたのだろうか。
タイセイは、頭を掻きながら平然と笑うエラを、驚きをもって見つめ直した。
初めて会って香港の街を歩いたときは、彼女はシンデレラのような切なさと繊細さを感じさせた。しかし、自分を救い出しに来てくれた今はどうだ。こんな状況下に臆することもなく、大胆に行動を起こす。シンデレラどころか、マーベリックのヒーローそのものではないか。
タイセイは突然エラを抱きしめた。エラは彼の突然の抱擁に驚くことなく、しっかりと受け止めた。タイセイと別れた4日前から待ち望んでいたものが、今ようやくエラの腕の中に届けられたのだ。
たった2秒だったのだが、ふたりは永遠とも感じる抱擁に酔いしれた。
「ハグもこれくらいにして…これからこの家を出てどうするのか言ってちょうだい」
今度は我に帰るのはエラの方が早かった。
「ああ…」
名残惜しそうに体を離すタイセイ。
「とにかく日本総領事館へ逃げ込もう」
彼はエラの手を取って、外に走り出た。
「こんな場所でタクシー捕まるかな…」
「大丈夫、車持ってきたから」
「えっ?」
「私が働いている家にあった車を、黙って持ってきちゃった」