シンデレラの網膜記憶~魔法都市香港にようこそ
エラの返事が聞けぬ間に、事件は起きた。
最後にやってきた3台目のエレベーターには、黒いスーツの残りの集団が乗っていたはずだったが、開いた扉から飛び出てきたのは、いずれも銃を持ったこわもての香港男子のグループだった。当然仲間が乗っていると思っていたリーダーたちは、不意を突かれ自分らの銃を抜く間もなく制圧されてしまった。
事態を飲み込めぬまま、タイセイとエラは、頭から麻袋をかぶせられ引きずり出される。
2回目の拉致グループの正体など、タイセイにはわかるはずもなかった。
〈九龍城砦〉
「ミセス・コウケツ。メイドはビンゴだったよ。息子さんを確保した」
ガラケーから報告を受けたドラゴンヘッドは、無表情に言った。そんな冷静なドラゴンヘッドとは対照的に、モエは椅子を蹴って飛び上がった。
「ほんと、ほんとなの?で、息子は無事なの?」
「ああ、無事だ」
「あーよかった…」
モエは、ドラゴンヘッドにはもちろんだが、九龍城砦を大声で駆け巡り、すべての住民にお礼を言いたい気分になっていた。
「しかしあんたの息子も変わっているな。もう少しで日本総領事館に逃げ込めたのに、そのドアを開けようとしなかったらしい」
「どうして?」
「わしの息子でもないのに、わかるはずがないだろ」
「そうねよ…でも母親の私でさえ、息子は永遠の謎なのよ」
「それに、お宅の息子は、あの例のメイドの手を一向に放さずわめき続けているそうだ」
「メイドと一緒なの?」
「ああ、成り行きだけど、そのメイドも一緒に確保した。彼女が中国の役人からお宅の息子を救って、日本総領事館の前まで連れて行ったようだな。しかし…息子さんを日本総領事館に引き渡した後はどうするつもりだったのだろう。中国政府を敵に回して、生きて戻れるはずもないのに…」
「そうなの…」
モエとドラゴンヘッドの会話の内容を察知したのか、小松鼠も笑顔でモエに抱きついてきた。モエはその抱擁にやさしく応えながら、何度もお礼を言った。
そんな仲睦まじいふたりに、多少嫉妬の眼差しをくれながら、ドラゴンヘッドが話を続ける。
「息子さんを確保したが、いつまた役人が反撃に出るとも限らん。中国国内にいては安心できないから、とりあえずツテを使ってベトナムのダナンに密航させよう。あんたはダナンのホテルで先回りして待っていてくれ」
「ホテルってどこ?」
最後にやってきた3台目のエレベーターには、黒いスーツの残りの集団が乗っていたはずだったが、開いた扉から飛び出てきたのは、いずれも銃を持ったこわもての香港男子のグループだった。当然仲間が乗っていると思っていたリーダーたちは、不意を突かれ自分らの銃を抜く間もなく制圧されてしまった。
事態を飲み込めぬまま、タイセイとエラは、頭から麻袋をかぶせられ引きずり出される。
2回目の拉致グループの正体など、タイセイにはわかるはずもなかった。
〈九龍城砦〉
「ミセス・コウケツ。メイドはビンゴだったよ。息子さんを確保した」
ガラケーから報告を受けたドラゴンヘッドは、無表情に言った。そんな冷静なドラゴンヘッドとは対照的に、モエは椅子を蹴って飛び上がった。
「ほんと、ほんとなの?で、息子は無事なの?」
「ああ、無事だ」
「あーよかった…」
モエは、ドラゴンヘッドにはもちろんだが、九龍城砦を大声で駆け巡り、すべての住民にお礼を言いたい気分になっていた。
「しかしあんたの息子も変わっているな。もう少しで日本総領事館に逃げ込めたのに、そのドアを開けようとしなかったらしい」
「どうして?」
「わしの息子でもないのに、わかるはずがないだろ」
「そうねよ…でも母親の私でさえ、息子は永遠の謎なのよ」
「それに、お宅の息子は、あの例のメイドの手を一向に放さずわめき続けているそうだ」
「メイドと一緒なの?」
「ああ、成り行きだけど、そのメイドも一緒に確保した。彼女が中国の役人からお宅の息子を救って、日本総領事館の前まで連れて行ったようだな。しかし…息子さんを日本総領事館に引き渡した後はどうするつもりだったのだろう。中国政府を敵に回して、生きて戻れるはずもないのに…」
「そうなの…」
モエとドラゴンヘッドの会話の内容を察知したのか、小松鼠も笑顔でモエに抱きついてきた。モエはその抱擁にやさしく応えながら、何度もお礼を言った。
そんな仲睦まじいふたりに、多少嫉妬の眼差しをくれながら、ドラゴンヘッドが話を続ける。
「息子さんを確保したが、いつまた役人が反撃に出るとも限らん。中国国内にいては安心できないから、とりあえずツテを使ってベトナムのダナンに密航させよう。あんたはダナンのホテルで先回りして待っていてくれ」
「ホテルってどこ?」