シンデレラの網膜記憶~魔法都市香港にようこそ
だがそれでも、少年は動こうとしない。恐怖で足をすくませていたモエだったが、老人と少年の意味不明の中国語のやり取りにも関わらず、少年が自分の味方になってくれているのではないかと感じることができた。
「おい、ミセス・コウケツ。うちの小松鼠に、いったい何をしたんだ」
常日頃からドラゴンヘッドの言葉には、従順に従う小松鼠。 しかし少年が初めて見せた反抗に、彼はその困惑の矛先をモエに向けた。
「シャオソンシュウくんっていうのね」
少年が味方についてくれたと思うと、モエも多少落ち着いてきた。しがみつく少年の手を優しくなぜながら、言葉を続ける。
「ドラゴンヘッドさんに会いたいと思って、危なそうな人を見つけては尋ね歩き…そんなことをしながら街を彷徨っていたら、いきなり彼が近づいてきて連絡先が書かれたメモを渡されたの」
小松鼠を見ると、興奮しているせいか髪が乱れている。モエは彼の髪を手すきで整えてあげた。
「そうしたら今度はドラゴンヘッドさんを連れて現れてくれたのには驚いた…。シャオソンシュウくんと会ったのは今で2度目だけど、お名前も今知ったくらいなのよ」
ドラゴンヘッドは舌打ちをすると、首を左右に振りながら、元の椅子に座る。それを見た少年は、安心したように、今度はモエの袖を握って、彼女の横に座った。
「やれやれ…孫にせがまれて…仕方なく来てはみたものの…」
老人は、モエの横に座る少年にあらためて目を向けた。
「お分かりだと思うが、この子は少し知恵が遅れておる」
ドラゴンヘッドの瞳に家族愛の灯を見て、モエも少し心が緩んだ。
「シャオソンシュウくんはドラゴンヘッドさんのお孫さんだったのね?」
少年は、視点を定めず、あちこちをせわしなく見回している。モエに見つめられて、若干照れているしぐさにも見える。ドラゴンヘッドはモエの問いに答えもせず、言葉を続けた。
「しかしな…頭に知恵が詰まっていない分、その隙間に…なにか大切なものを隠し持っているのじゃないかと思う時がある」
〈香港街景〉
エラが我に帰って身を離すまで、それは長い抱擁だった。
「おい、ミセス・コウケツ。うちの小松鼠に、いったい何をしたんだ」
常日頃からドラゴンヘッドの言葉には、従順に従う小松鼠。 しかし少年が初めて見せた反抗に、彼はその困惑の矛先をモエに向けた。
「シャオソンシュウくんっていうのね」
少年が味方についてくれたと思うと、モエも多少落ち着いてきた。しがみつく少年の手を優しくなぜながら、言葉を続ける。
「ドラゴンヘッドさんに会いたいと思って、危なそうな人を見つけては尋ね歩き…そんなことをしながら街を彷徨っていたら、いきなり彼が近づいてきて連絡先が書かれたメモを渡されたの」
小松鼠を見ると、興奮しているせいか髪が乱れている。モエは彼の髪を手すきで整えてあげた。
「そうしたら今度はドラゴンヘッドさんを連れて現れてくれたのには驚いた…。シャオソンシュウくんと会ったのは今で2度目だけど、お名前も今知ったくらいなのよ」
ドラゴンヘッドは舌打ちをすると、首を左右に振りながら、元の椅子に座る。それを見た少年は、安心したように、今度はモエの袖を握って、彼女の横に座った。
「やれやれ…孫にせがまれて…仕方なく来てはみたものの…」
老人は、モエの横に座る少年にあらためて目を向けた。
「お分かりだと思うが、この子は少し知恵が遅れておる」
ドラゴンヘッドの瞳に家族愛の灯を見て、モエも少し心が緩んだ。
「シャオソンシュウくんはドラゴンヘッドさんのお孫さんだったのね?」
少年は、視点を定めず、あちこちをせわしなく見回している。モエに見つめられて、若干照れているしぐさにも見える。ドラゴンヘッドはモエの問いに答えもせず、言葉を続けた。
「しかしな…頭に知恵が詰まっていない分、その隙間に…なにか大切なものを隠し持っているのじゃないかと思う時がある」
〈香港街景〉
エラが我に帰って身を離すまで、それは長い抱擁だった。