シンデレラの網膜記憶~魔法都市香港にようこそ
「そして、見つけてくれたら、これとは別に成功報酬として220万香港ドルをお支払いします」
どや顔のモエであったが、ドラゴンヘッドの瞳に宿った光が、実は邪悪な光であったことに気づくのに、そう長い時間はかからなかった。
「世間知らずにもほどがある…こんな大金をこんなところに持ち込むなんて…。いいか、よく覚いておきなさい」
ドラゴンヘッドは、札束を自分の方へ引き寄せながら言葉を続けた。
「私たちが大切にしている信条がもうひとつある…それはな、できるだけ楽して儲けろってことなんだよ」
ドラゴンヘッドが入口に立っている男に、顎でサインを送る。
「これ以上、話しを聞く必要もあるまい」
男が音もなくモエの背後に回りこんだ。
「この金はあんたを無事に空に帰す代金としていただくよ。ただし、おとなしく戻るのか、海の底で獰猛な魚たちの餌になるのかは、あんた次第だがな…」
やはり犯罪組織のドラゴンヘッドには、まともな取引なんて通用しない。彼の恐ろしい言葉に、モエは腰から下が震えて、立ち上がるのも難しい状態なっていた。しかし、気丈にも臍から上は、なんとか持ちこたえている。消えかかる勇気の灯を無理やり焚きつけて彼女は言った。
「ここに来たら、無事には帰れまいと予想はしていました。それでも、ここにやってきたのは、ドラゴンヘッドならドラゴンヘッドとしてのプライドがあると信じたからよ。お金を受け取るなら、その仕事はきっちりやるべきじゃないかしら」
モエの精いっぱいの訴えにもまったく意に介せず、非情なドラゴンヘッドは黙って立ち上がった。その時だ。それまではおとなしくドラゴンヘッドの袖を握っていた少年が、その手を離すと、テーブルを回ってモエの腕にしがみついた。そして、ドラゴンヘッドに向かって唸り声をあげたのだ。
「ううう…」
「なんだ、小松鼠(シャオソンシュウ)もう帰って寝る時間だぞ」
「ううう…」
ドラゴンヘッドが必死になだめるが、少年はモエの腕にしがみついたまま、動こうとしない。
「小松鼠、お前のおかげで思わぬ金が手に入ったが、もう話しはおしまいだ。こっちへ来い」
言うことを聞かない少年に、焦れたドラゴンヘッドは、今度は口調を荒げて諫める。
どや顔のモエであったが、ドラゴンヘッドの瞳に宿った光が、実は邪悪な光であったことに気づくのに、そう長い時間はかからなかった。
「世間知らずにもほどがある…こんな大金をこんなところに持ち込むなんて…。いいか、よく覚いておきなさい」
ドラゴンヘッドは、札束を自分の方へ引き寄せながら言葉を続けた。
「私たちが大切にしている信条がもうひとつある…それはな、できるだけ楽して儲けろってことなんだよ」
ドラゴンヘッドが入口に立っている男に、顎でサインを送る。
「これ以上、話しを聞く必要もあるまい」
男が音もなくモエの背後に回りこんだ。
「この金はあんたを無事に空に帰す代金としていただくよ。ただし、おとなしく戻るのか、海の底で獰猛な魚たちの餌になるのかは、あんた次第だがな…」
やはり犯罪組織のドラゴンヘッドには、まともな取引なんて通用しない。彼の恐ろしい言葉に、モエは腰から下が震えて、立ち上がるのも難しい状態なっていた。しかし、気丈にも臍から上は、なんとか持ちこたえている。消えかかる勇気の灯を無理やり焚きつけて彼女は言った。
「ここに来たら、無事には帰れまいと予想はしていました。それでも、ここにやってきたのは、ドラゴンヘッドならドラゴンヘッドとしてのプライドがあると信じたからよ。お金を受け取るなら、その仕事はきっちりやるべきじゃないかしら」
モエの精いっぱいの訴えにもまったく意に介せず、非情なドラゴンヘッドは黙って立ち上がった。その時だ。それまではおとなしくドラゴンヘッドの袖を握っていた少年が、その手を離すと、テーブルを回ってモエの腕にしがみついた。そして、ドラゴンヘッドに向かって唸り声をあげたのだ。
「ううう…」
「なんだ、小松鼠(シャオソンシュウ)もう帰って寝る時間だぞ」
「ううう…」
ドラゴンヘッドが必死になだめるが、少年はモエの腕にしがみついたまま、動こうとしない。
「小松鼠、お前のおかげで思わぬ金が手に入ったが、もう話しはおしまいだ。こっちへ来い」
言うことを聞かない少年に、焦れたドラゴンヘッドは、今度は口調を荒げて諫める。