【完結】私に甘い眼鏡くん
その夜、私はなっちゃんの行き過ぎた誤解を解くことに必死だった。
何度も何度もやましいことは何もなかったと伝えた。
それほどまでにベッド横に男の眼鏡があるという状況は紛らわしい。
落ち着いたなっちゃんに、夕くんに告白し、付き合うことになったと報告すると彼女は一言、「よかった」と言った。
そしてなんと、私と夕くんがお付き合いを始めた同時刻、なっちゃんは太一とお付き合いを始めていた。
私に気を遣って言わなかったらしいのだが、彼女は文化祭のあの日、先輩に告白して玉砕していたらしい。全
然知らなくて、親友なんておこがましいと落ち込んだ私になっちゃんはフォローを入れた。
「太一にしか話してなかったんだ。隠してたとか、そんなんじゃないよ」
ごめんね、と謝る彼女に気付かなくてごめんねと抱きついた。
それより私に彼氏が出来て嬉しいよと言ってくれるなっちゃんは、世界で一番人間ができていると思う。
「太一には私が告白したの。彩のことまだ好きなのはわかってたんだけど、とられたくないなって」
「え」
「やっぱ、アイツの隣にいるのは私がいい! って思ったんだ。東雲にべた惚れの彩をずっと引きずってるなら、私で忘れさせてやる!って」
だから私のライバルは彩だよと啖呵を切る彼女に私は「滅相もない」と苦笑いで返した。
修学旅行二日目は私服での学習。
朝食をとった私たちは。今日のために二人で買いに行った服を着て、集合場所のバスへと向かう。
「先生おはようございまーす」
「おはよう」
バスの前で出席確認をしている先生に挨拶をして乗り込む。
先に行くなっちゃんの隣に座ろうとすると、無言で制止された。
「え?」
「え? じゃないです。私の隣は彼氏様専用なので彩さんはあちらに」
促され私はしぶしぶ彼女と反対側の席に座った。
「お、東雲さんの彼女じゃないですか~って、なんで二人とも隣じゃないんだ?」
調子よくバスに乗ってきた太一が私を茶化すと、騒がしかった車内が騒然とした。
「え、望月さん、東雲と付き合ってんの・‥‥‥?」
後ろの方から聞こえた男子の声はすぐに冷やかしに代わり、慣れていない私はつい俯いてしまう。
「あー、俺と奈月も付き合い始めたから。ちょっかいだすなよ」
「お前らは付き合ってたようなもんだろ」
太一の一言で話題がすり替わった。
すごい、この男、分かっている。
「ありがとう」というと「悪かったな」と言いながらなっちゃんの隣に座る。
彼女も私の方に顔を寄せて、「ごめん、やりすぎた」と言ってくるので、私は妙に居心地が悪い。
「ねえ」
スマホをいじっていた私の頭上で声がした。
顔を上げると冷たい目の伊藤さんが私を見下ろしている。
その勢いに気圧され、私は肩をすぼめた。
「東雲くんと付き合ってるって、本当?」
一難去ってまた一難とはまさにこのことだと思う。
バス内はまた私に関心が向いて、心の中で頭を抱えた。
でもここで圧倒されてどうする。
せっかく夕くんは私を選んでくれたんだ、胸を張らなきゃ。
「そ——」
「俺が告白して、付き合ってもらったけど。どいてくれる?」
「し、東雲くん!」
突然の夕くんの助太刀に驚く。
ほぼクラス全員の前で真顔のまま言い放った彼の男気に、みんながなぜか拍手しだす。
「よく言った!」と太一の声掛けを華麗にスルーしながら、夕くんは私の横、窓側の席に座った。
「まだなにかあるのか?」
あっけにとられ立ちすくんでいた伊藤さんは、少し目を潤ませて自分の席へ戻っていった。
ひそひそと何か言われていて、少しいたたまれない。
「ありがとう」
今日の夕くんは心強かった。
そして、すごくかっこいい。
「事実を述べただけだ」
そう言って彼はイヤホンの片耳を私に渡してくれる。
「昨日の続き、観るだろ?」
「うん!」
目立つことは苦手だけれど、彼が隣にいれば何でも乗り越えられる気がした。
何度も何度もやましいことは何もなかったと伝えた。
それほどまでにベッド横に男の眼鏡があるという状況は紛らわしい。
落ち着いたなっちゃんに、夕くんに告白し、付き合うことになったと報告すると彼女は一言、「よかった」と言った。
そしてなんと、私と夕くんがお付き合いを始めた同時刻、なっちゃんは太一とお付き合いを始めていた。
私に気を遣って言わなかったらしいのだが、彼女は文化祭のあの日、先輩に告白して玉砕していたらしい。全
然知らなくて、親友なんておこがましいと落ち込んだ私になっちゃんはフォローを入れた。
「太一にしか話してなかったんだ。隠してたとか、そんなんじゃないよ」
ごめんね、と謝る彼女に気付かなくてごめんねと抱きついた。
それより私に彼氏が出来て嬉しいよと言ってくれるなっちゃんは、世界で一番人間ができていると思う。
「太一には私が告白したの。彩のことまだ好きなのはわかってたんだけど、とられたくないなって」
「え」
「やっぱ、アイツの隣にいるのは私がいい! って思ったんだ。東雲にべた惚れの彩をずっと引きずってるなら、私で忘れさせてやる!って」
だから私のライバルは彩だよと啖呵を切る彼女に私は「滅相もない」と苦笑いで返した。
修学旅行二日目は私服での学習。
朝食をとった私たちは。今日のために二人で買いに行った服を着て、集合場所のバスへと向かう。
「先生おはようございまーす」
「おはよう」
バスの前で出席確認をしている先生に挨拶をして乗り込む。
先に行くなっちゃんの隣に座ろうとすると、無言で制止された。
「え?」
「え? じゃないです。私の隣は彼氏様専用なので彩さんはあちらに」
促され私はしぶしぶ彼女と反対側の席に座った。
「お、東雲さんの彼女じゃないですか~って、なんで二人とも隣じゃないんだ?」
調子よくバスに乗ってきた太一が私を茶化すと、騒がしかった車内が騒然とした。
「え、望月さん、東雲と付き合ってんの・‥‥‥?」
後ろの方から聞こえた男子の声はすぐに冷やかしに代わり、慣れていない私はつい俯いてしまう。
「あー、俺と奈月も付き合い始めたから。ちょっかいだすなよ」
「お前らは付き合ってたようなもんだろ」
太一の一言で話題がすり替わった。
すごい、この男、分かっている。
「ありがとう」というと「悪かったな」と言いながらなっちゃんの隣に座る。
彼女も私の方に顔を寄せて、「ごめん、やりすぎた」と言ってくるので、私は妙に居心地が悪い。
「ねえ」
スマホをいじっていた私の頭上で声がした。
顔を上げると冷たい目の伊藤さんが私を見下ろしている。
その勢いに気圧され、私は肩をすぼめた。
「東雲くんと付き合ってるって、本当?」
一難去ってまた一難とはまさにこのことだと思う。
バス内はまた私に関心が向いて、心の中で頭を抱えた。
でもここで圧倒されてどうする。
せっかく夕くんは私を選んでくれたんだ、胸を張らなきゃ。
「そ——」
「俺が告白して、付き合ってもらったけど。どいてくれる?」
「し、東雲くん!」
突然の夕くんの助太刀に驚く。
ほぼクラス全員の前で真顔のまま言い放った彼の男気に、みんながなぜか拍手しだす。
「よく言った!」と太一の声掛けを華麗にスルーしながら、夕くんは私の横、窓側の席に座った。
「まだなにかあるのか?」
あっけにとられ立ちすくんでいた伊藤さんは、少し目を潤ませて自分の席へ戻っていった。
ひそひそと何か言われていて、少しいたたまれない。
「ありがとう」
今日の夕くんは心強かった。
そして、すごくかっこいい。
「事実を述べただけだ」
そう言って彼はイヤホンの片耳を私に渡してくれる。
「昨日の続き、観るだろ?」
「うん!」
目立つことは苦手だけれど、彼が隣にいれば何でも乗り越えられる気がした。