【完結】私に甘い眼鏡くん
ガマでの平和学習を終えて、私たちは水族館へ向かう。
夕くんは窓の外に広がる海を見ていた。
「海、綺麗だね」
「ああ。海は物珍しいからつい目が行くな」
「なんか意外。あんまり自然とか興味なさそうなのに」
「お前は俺をなんだと思ってるんだ?」
笑ってごまかした。
掴みどころのない人、なんて答えたらなんだか冷たい目で見られそうだったから。
「海ってなんでこんなに青いのかな」
「水の分子が青い光を吸収せずに海面で反射して青く見える」
「すごい」
まさか回答が返ってくると思わなかった。
一つ賢くなってしまった。博識な彼に素直に惚れ直す。
水族館でクラス写真を撮ったのち自由行動となった。
なっちゃんと案内図を見てとりあえず入口に行こうかと話していると、彼女の肩に太一が腕をかけた。
「おいおい、二人で回るなんて水臭いこと言わないよな?」
見れば反対側の腕には無理やり連れてこられたであろう夕くんが、迷惑そうな顔で腕を外そうとしている。
「太一がダブルデートしたいって言うなら、いいけど?」
からかい気味のなっちゃんに彼はむきになって言い返した。
「東雲が彩と回りたそうにしてたから気を遣ってやっただけだ」
「よく言うな。友達がいないお前と回ってやるけど森中達もいないと嫌だと勝手に言い訳してたのはお前だろ」
「おい! 適当なこと言うな!」
これは夕くんが正しいのだろうなあと思ったらなっちゃんも全く同じ考えだったようで、こらえきれずに笑い出した。
「もー太一私のこと好きすぎ。で? 東雲も彩と回りたいわけ?」
「当たり前だ」
顔色一つ変えずにそう言い切った夕くん。
なっちゃんは目を丸くして、太一は「すげぇ‥‥‥」と思わずつぶやき、私は頬を染めた。
私たちの反応を見た彼は首をかしげる。
「‥‥‥なんか、私東雲のこと勘違いしてたかも。ごめん」
「俺も‥‥‥いろいろ悪かったな」
態度が急変した二人を見て夕くんは露骨に眉をひそめた。
「なんなんだ?」
「二人なりに今まで冷たくしてたこと謝ってるんだよ。さ、行こ!」
「あ、ああ」
完全に困り顔の彼の服の袖を引っ張ると、
腕を掴まれた。
「服伸びるだろ。こっち」
しっかりと手が握られる。今までの繋ぎ方じゃなくて、指が絡められた、恋人繋ぎ。
「ちょ、ちょ、クラスの人もいるんだよ!?」
「なにか悪いのか?」
「もー!」
こんなの見られたら恥ずかしいに決まっている。なっちゃんたちは頭を抱えていた。
「こんな積極性が東雲にあったなんて‥‥‥」
「女子からの告白を興味ないで一蹴していた東雲がなあ‥‥‥」
「そこじゃないよ、太一もこれぐらいの男気見せなさいよ!」
「ええ!? おい、お前のせいで怒られたぞ!?」
「春川がヘタレなのが悪い。それに、本当に好きだったら手を繋ぎたいと思うぐらい普通だろ」
ぐうの音もでないようだった。
というか、夕くんがそんなことを思って手を繋いでくれているなんて、恥ずかしくて嬉しい。
「ああもうわかったよ!」
叫んだ太一は顔を真っ赤にしてなっちゃんの手を掴む。
「今日は混んでるから! 特別だからな!」
有名水族館と言えども、今日はド平日の真昼間。
そんなに混んでいないのに、下手な言い訳をしている彼はやっぱりヘタレだと思う。