痛み無しには息ていけない
「それではお疲れ様です」

「はーい、お疲れ様です!」


担当さんが去った後も、自分は黙々と片付けを続ける。
マスクしている所為もあってか、下を向いて片付けしていたら、息苦しくなってきた。
あとは可動式テーブルを元の場所に戻して、自分も着替えて、通用口で店側のサイン貰って、派遣会社に終了報告の電話すれば、全部終わり…!
チャカチャカと作業していき、店を出て、マスクを顎までずらす。
そのまま伸びをしてから、終了報告の電話をかける。
色々と報告したり、疫病流行の影響下の雑感なども話す。
スマホのボタンをタップして、今日の仕事が全部終わった。


「ぅあー…疲れた」


誰と話してる訳でも無いが、一人言が出る。
試食販売の時はいつもだが、一日中立っていた所為で、足がパンパンに浮腫んで重い。

何より普段は全くマスクしてないから、それが本当にしんどすぎた。
息苦しい事この上ない。
大声張るから喉も渇きがちだし、何より息が切れがち。――確かに疫病は空気感染だっていうから、マスクをするのも分からなくもないけど。
“自傷行為が悪化しない為の手段、治療法”とか言われているのであれば、マスクなんてしなくたって、理由不明な出血が止まらないから、悪化する筈が無いのだ。
…本当にやりきれない。

しかし本当に疲れた。
コンビニで飲み物とお菓子買って、早く電車乗っちゃおう。座れると良いなー。
で、家帰ってから、洗濯物干して、貰った残り物のソーセージを冷蔵庫に入れて…。
…あれ、スーパーに寄る必要とかあったっけ?もう余力無いんだけど…。早く寝たいし。
それでもまぁ、仕事があるだけ有り難い。色んな業種が自粛に追い込まれてるんだから。

自分は思いきり伸びをした。
シャツの袖から覗いた右手に青痣が、右腕に裂傷と無数の引っ掻き傷が残っていた。
3月末、夜はまだ寒い。
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