【修正版】クールで無表情な同期が十年間恋情を患っていた理由

「ありがとう。富丘くん」

書類のミスだって、不備だって、彼女じゃなければ指摘しない。他のやつなんて、どうだっていいのだから。

そのままその周りに出ようとしたとき、彼女の顔色が、いつもよりも良くないように見えた。

心配になった僕は、気づけばすっと手を伸ばしていた。

「……あまり顔色が良くない」

そっと指の背で頬を撫でると、彼女の肩が跳ね上がる。

「そ、そう?……そんなことないと、思うけど……」

あぁ、可愛い。緊張してるのかな。目が右往左往している。

からかいたくなる気持ちを、ぐっとこらえる。

「あまり無理しないほうがいいよ」

今度こそ、外回りへと向かった。
< 10 / 61 >

この作品をシェア

pagetop