あやかしの集う夢の中で
「おい、待てよ、愛理。

オレを置いていくつもりかよ」



桜介はスタスタと先を急ぐ愛理の背中を追いかけた。



そして愛理を追いかける桜介の頭の中で、いつも自分よりも前を歩いていた幼い頃の愛理の記憶が思い浮かんだ。



小さなことウジウジと悩んで行動ができなくなってしまう自分と、いつもハキハキしていて弱い自分を守ってくれていた愛理。



あれはもう十年近く前の記憶なのに、なぜだか桜介の頭の中でそのときの記憶がハッキリと蘇り、今の愛理の後ろ姿とリンクしていた。



(愛理は昔から強くて、集団の中で一人になっても自分の意見を変えない強さがあった。

もしもオレと愛理が姉弟だったら、愛理がお姉ちゃんでオレが弟なんだと思う。

オレは愛理の強さが羨ましいよ。

オレは愛理みたいに強くないから)



「やっと追いついた……。

なぁ、愛理。

そんなにせかせか歩くなよ」



「せかせかなんてしてないよ。

桜介が遅いだけじゃない?」



「愛理さぁ、やっぱり怒ってない?

何だか言葉にトゲがあるんだけどさぁ」



「怒ってないよ!

今はただ、舞ちゃんの大切な夢を守るために先を急いでるだけだから」



愛理はそう言って、桜介に目を向けた。



そのときの愛理の表情はかわいらしくて、桜介は少しだけ愛理を女性として意識していた。
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