あやかしの集う夢の中で
「舞ちゃんの大切な夢が明るく輝き出した……。

舞ちゃんは夢をまだあきらめてなんかいないんだ。

舞ちゃんは必死に自分の夢を守ろうとしているんだ」



今、煌々と輝いている舞の夢は、もしかしたら消える前のロウソクの炎のように最後の明るさを見せているのかもしれなかった。



でも桜介たちは舞の大切な夢が示した行動が、自分を守ってと言っているみたいで胸が締めつけられていた。



桜介や愛理には舞のように叶えたい夢はない。



だからこそ、舞の大切な夢が放つ光は本当に貴重で、絶対に守らなくてはいけないものだと思っていた。



あんなにキレイな光を放つ舞の夢が叶わないはずがないから。



「あっ、舞ちゃんのピアノの演奏が聞こえる。

これってショパンのノクターンだよ」



愛理は聞こえてきたピアノの音色に反応して、桜介にそう話しかけていた。



「不思議な感覚だよ。

舞ちゃんの大切な夢が直接、オレの頭の中に入ってくる。

まだ幼い頃の舞ちゃんがピアノを弾いている様子や舞ちゃんがコンクールでピアノを弾いている様子が……。

舞ちゃんはまだ全然自分の夢をあきらめてないんだよ!

絶対に夢を叶えようとしているんだよ!」



「桜介、私にも見えるよ。

舞ちゃんの大切な夢が。

こんなにキラキラしてて、胸が熱くなってくるような夢を絶対になくさせちゃいけないよね。

私たちは全力で舞ちゃんの夢を守らないといけないよね」



「消えかけの夢が最後の抵抗をしおって。

夢は叶わぬままに消えていくのが運命。

我ら夢妖怪はその当たり前の出来事を現実にするためにここにいる!」



あやかし王はそう叫ぶと、桜介たちをにらみつけた。



「願いとあらば、この我が相手をしてくれよう。

己の無力さを思い知り、あの空に輝く夢と共にこの世界から消えていけ!」



あやかし王はそう叫ぶと、両手に暗闇のオーラを集め出した。



桜介たちはそれを見て、あやかし王との本当の戦いが始まることを感じていた。
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