あやかしの集う夢の中で
(時宗のヤツめ、クラス中の女子の関心を集めやがって。

イケメンでクールで高身長。

おまけにアイドルみたいな甘い声をしていやがる。

それに男のくせに女みたいな長い髪をしやがって……。

オレはあいつにだけは絶対に負けたくないぜ)



桜介は今年の春に転校してきたイケメン男子の風間時宗に強い嫉妬と憧れを抱いていた。



そしてそれと同時に時宗だけには絶対に負けたくないと、桜介は真剣に思っていた。



一ノ瀬中学に転校してきてまだ一ヶ月も経っていないのに、一ノ瀬中学の男子モテランキング1位なんてあり得ないし、あってはいけない。



自分だって、時宗みたいにイケメンで高身長だったら、モテモテで夢のような中学ライフを満喫していたかもしれないのに。



ぐぬぬっ。

許せん、風間時宗。



自分だって……、自分だって……、モテモテになって、クラスの人気者とかになりたいのに。



時宗は黒板の前に立ってチョークを持つと、まるでチョークがひとりでに黒板を走っていくかのように、スラスラと問題を解いていった。



そして黒板に書いてある5問の問題をすべて解き終えると、涼しげな顔で鎌田先生にこう言った。



「先生、答えは合っていますか?」



「全問正解。

よくできたな、風間」



時宗は鎌田先生のその言葉を聞くと、静かにチョークを置き、また涼しげな顔で自分の席へと戻っていった。



桜介は時宗のそのカッコいい様子を悔しがりながら見つめていた。
< 14 / 171 >

この作品をシェア

pagetop