あやかしの集う夢の中で
(愛理はいつもオレをダメな奴だってけなすけど、そんなダメなオレをいつだって真剣に信じてくれていたのは愛理だ。

きっと愛理だけはオレの妄想みたいな大きな夢を、笑いながらでもちゃんと聞いてくれるに違いない。

でも、愛理。

どうしてお前はそんなにオレのことを心配してくれるんだ？

いつもキラキラしている愛理は、オレなんかよりも別な誰かを見るべきなのに……)



子供の頃には持っていられた夢も、学校の集団生活の中で自分は何者でもないと気づかされて、いつの間にか手放してしまう。



あの人は特別だから……。

今は夢を見ているときじゃないから……。

親が、先生が、友達が……。



夢を捨てる理由なんて、次から次へと溢れてきて、気づけば周りには大切な夢を捨てた人だらけだ。



ずっと夢を持っていられるのは舞のような特別な人だけ。



もしかしたら自分も自分にそう言い聞かせて、夢見ることをあきらめていたかもしれない。



でも、もしも本当に夢が叶うとしたら、自分は時宗みたいなスゴい奴になりたい。



今の自分ではない何者かに自分はなりたい。



「ねぇ、カノンちゃん。

桜介の傷を癒せる？」



「できると思います。

カノンのすべての思いを込めれば」



鮮やかに舞いながら戦う時宗は、あやかし王と互角の実力を見せていた。



そんな時宗を見て、時宗は特別な奴なんだと桜介は改めて思う。



でも、自分にだって、きっと……。
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