あやかしの集う夢の中で
(あやかし王は今、時宗に気を取られている。

今ならオレの一撃が当たる!

絶対に!)



十メートルの巨体のあやかし王の胸の高さまでジャンプした桜介は、炎の剣を振りかぶり、思いっきりその炎の剣をあやかし王の胸に突き刺した。



その瞬間、あやかし王の不気味で残酷な目が桜介をギロリとにらんだ。



でも桜介はそんな視線に怯えることなく、自分の炎の力を全開にして、炎の剣に集めていた。



「いけ、炎の剣!

あやかし王を燃やし尽くせ!」



あやかし王の胸に刺さった炎の剣は、あやかし王の体の内部を燃やし始めた。



あやかし王はその炎の威力に悲鳴を上げ、ヨロヨロと後退すると、背中から勢いよく地面に倒れた。



「桜介がやった!

あやかし王を倒したよ!」



桜介は炎の剣をあやかし王の胸から抜くと、あやかし王にとどめを刺すために、あやかし王の首の方へと走り出した。



すると、さっきまで地面に倒れていたはずの時宗が風を具現化した剣を片手に、まるで風のような速さで走ってきていた。



「来たな、時宗。

でも、あやかし王にとどめを刺すのはこのオレだぜ!」



桜介と時宗は競うように走り、そして二人はほぼ同時にあやかし王の首の方へとジャンプした。



そして次の瞬間、炎の剣と風の剣はあやかし王の首に突き刺さり、あやかし王は断末魔の叫び声を上げると、もう動かなくなっていた。



「や、やった!

あやかし王を倒したぜ!」



桜介がそう叫んで、よろこびを爆発させたガッツポーズをすると、愛理とカノンが駆け寄ってきて、そこに歓喜の輪ができた。



桜介は大切な仲間に囲まれながら、自分がなりたかった何者かになれたような気がしていた。



自分だって願えば未来を変えられる。

自分だって願えば何者かになれる。



桜介はそう思って無邪気にはしゃぎ、最高の笑顔で勝利の瞬間に酔いしれていた。
< 162 / 171 >

この作品をシェア

pagetop