あやかしの集う夢の中で
「その動画に映っているおぞましい姿のバケモノが夢妖怪だ」



時宗は夢中になって動画に見入っている愛理にそう言った。



「もしも君たちのさっきの話が本当ならば、如月舞の夢の世界も、こいつらに荒らされているということになる。

そしてこいつらに夢の世界を荒らされ続けたならば……」



時宗はそこまで言うと、少し間を置いてから真剣な顔でこう言った。



「如月舞の夢は跡形もなく壊され、その夢は二度と戻らない」



「舞ちゃんの夢が壊されて、二度と戻らないなんてことがあってたまるかよ」



桜介は時宗の言葉にすぐに反応して言葉を返した。



「舞ちゃんのピアノはな、本当にすげぇんだぞ。

オレみたいな音楽がわからないようなヤツの心にもガンガン響いてくるくらいにすげぇんだ。

そんな舞ちゃんの夢がなくなってたまるかよ。

舞ちゃんの夢は絶対に、絶対に叶うんだよ!」



桜介が感情をむき出しにして言ったその言葉を時宗はクールに受け流した。



「春野桜介、お前が敵対すべきはオレではなくて、夢妖怪だ。

オレはお前の敵じゃない」



桜介はイケメンの口から出てきた正論に悔しがりながら、強く拳を握りしめた。



たしかに時宗と敵対しても舞を助けることはできない。



今、自分がしなくてはならないことは時宗の力を借りてでも舞を夢妖怪から救うことだ。



「ねぇ、時宗君。

どうして動画の中の時宗君の髪は青色なの?

これって、ウィッグじゃないよね」



動画を見ていた愛理がふとした疑問を時宗に投げかけた。



時宗は愛理が指摘したその不思議な疑問にも表情を崩さず、クールに答えた。
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