あやかしの集う夢の中で
「はい、どなた様でしょうか?」



「私たちは舞ちゃんのクラスメイトです。

舞ちゃんがずっと学校を休んでいるので、お見舞いに来ました」



「そうでしたか。

わざわざすみません。

今から門を開けますので、どうぞ家にお上がり下さい」



愛理は小心者の自分と違って、いつでも落ち着いているなぁと、桜介は思った。



もしも舞のお母さんと話さなくてはならないのが自分なら、緊張して言葉が詰まりそうだけど、愛理にはそれがない。



でもその理由は何だろう?



愛理には内に秘めた自信があるからだろうか?



それとも元々が緊張しないタチなのか?



桜介がそんなことを考えているうちにお屋敷の門がひとりでに開いていった。



桜介はその様子にまた驚き、口をポカンと開けながら、自動で開く門を見つめていた。



「何、ぼうっとしてるの?

早く舞ちゃんに会いにいくよ」



愛理がそう言って、桜介の頭を軽く叩いた。



桜介はそれで我に返り、ちょっと怒り気味な顔の愛理に目を向けた。



愛理は自分と違って、どんな状況でも強いよなぁと思いながら。



「如月舞に会う前から舞い上がっている春野が本当に夢妖怪と戦えるのか?

大きなお屋敷を見たくらいで冷静さを失うな。

そんなことでは、命がいくつあっても足りないぞ」



クールなイケメンの時宗がそう言ったとき、桜介の心に火がついた。



時宗にだけは上からものを言われたくない。



時宗がイケメンでハイスペックな男だとしても、自分は時宗にだけは絶対に負けたくない。
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