青は奇跡
1学期








次の授業の用意をしていたら、先生に呼び出された。


休み時間ということもあって教室内は騒がしく、わたしの様子を気にする人はいない。




「悪いな、藤野」


「いえ、大丈夫です」


「何度も申し訳ないんだが…」





そこまで言われてまたか、と思った。


わたしの方が理由を知りたい。





「夏川に電話してやってくれないか?
俺が電話してもさっぱりですぐ切られちゃうんだ」





ははっと諦めたように笑う先生に苦笑いを返し、それから分かりましたと言った。




先生がわたしに夏川くんについて頼み事をするのは、隣の席という理由だけじゃないと思う。


真面目で、地味で、大人しいから。


確かにわたしの制服のスカートは他の女子よりも長く、眼鏡をかけて、リップも塗っていない。


おまけに友達も少ない。


人より優れていることと言えば、勉強が出来るくらいで、運動は平均的だ。





先生にとって反抗しない大人しい生徒は、懐いてくる生徒の次に頼み事がしやすいのだろう。





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