青は奇跡
「あれ、噂をすれば燦が来たね」
「あいつ聞いてたんじゃないの?」
2人はカラカラ笑っているけれど、わたしは気が気じゃない。
わたしなんかが舞い上がっていたら燦は嫌がるんじゃないかって思う。
居心地が悪くて席を立つと、ミホちゃんが「どうしたの?」と聞いてきた。
理由を正直に言う訳にもいかず、トイレに行ってくる、なんて見え透いた嘘をついてしまった。
教室を出る時、燦が少し顔をしかめたのが分かった。
だけど、見なかったふりをして廊下を歩き続けた。
やっと高校生らしいことが出来て嬉しかったけれど、それ以上に浮かれている自分が腹立たしかった。
1人だけ、勘違いして舞い上がるなんてことはしたくなかった。
渡り廊下にさしかかったとき、ふと空を見上げると、今にも雪が降ってきそうな重たい雲が広がっていた。