青は奇跡
「行くぞ」
ろくに返事をしている暇もなかった。
だって、今、わたしの右手は、夏川くんの左手と繋がっているのだから。
前を見ると、夏祭りが背景で、夏川くんの背中がある。
いつも細いと思っていたけれど、繋がれた手は骨ばっていて、筋肉がある。
ああ、男の子なんだ、と今さら思う。
強いけれど、怖くない。
なんでだろう。
「……ここでいいや」
「……ん?」
「ここ。ここなら人少ないし、落ち着いて食べられるんじゃないかって」
「……ありがとう」
階段に腰を下ろした時、低く何かを打ちつけるような音が聞こえてきた。
数秒後、夜空が赤、金、緑、銀色に輝いた。
「……花火だ」
「……うん、綺麗」
誰もが音を止めた気がする。
世界が、花火の音と、わたしの心臓の音だけになる。