愛艶婚~お見合い夫婦は営まない~
「あくまで他人……かぁ」
政略結婚でも、形だけでも家族になれるかなって思っていたんだけれど。彼にその気持ちはないようだ。
でも今の私には、ここでどうにかやっていくしかない。
彼と夫婦になって、冬子さんたちにも『大丈夫だよ』『幸せだよ』って笑えるように。
「……よし、頑張ろ!」
冷たくされても、他人だなんて言われても、せっかく家族になるのなら楽しい家庭にしたいから。
そのためにまず私にできるのは、妻らしく、彼のためになること。
もともと昔から、忙しい冬子さんたちの代わりに家事はやっていたし得意だ。
家のことはしなくていいなんて言われたって、やっちゃうもんね!
気合いを入れ直し自分の部屋を出る。
そしてまずは掃除……と思い家の中を見るけれど、すでに仲居さんが掃除したあとなのか埃ひとつ落ちていない。
洗濯物は2階のテラスにシワひとつなく綺麗に干されているし……ひと通りの家事は済んでしまっているようだ。
なら料理!好きにしていいって名護さんも言っていたし、まずは練習がてら自分のお昼ごはんでも作ろうかな。
そう考えキッチンに行き、背の高い冷蔵庫を開けた。
「あら、奥様もういらしてたんですね!」
そのタイミングで背後から声をかけられ振り向くと、そこには深緑色の着物を着た中年女性が立っている。
その格好から仲居さんだと気づくと、彼女がハウスキーパー担当なのだろうと察した。