愛艶婚~お見合い夫婦は営まない~
「おかえりなさい。増田さんがごはん用意していってくれたので、よかったら一緒に食べませんか?」
「あとで勝手に食べる。気にせずひとりで済ませてくれ」
勇気を出して食事に誘った。
ところが彼はこちらをチラリと見てそう言うだけで、『ただいま』のひとつすらもなく二階へ上がって行ってしまう。
あ……そう、ですか。
いや、それならひとりで食べるけどさ。
ダイニングに戻った私は、リビングからテレビの音が聞こえるだけの静かな中、ひとり夕食を食べ始める。
すごいな、増田さんのごはんプロ並みにおいしい。
おいしいんだ……けど。
こんな広い家でひとりで食べるご飯は、味気ない。
先ほどの名護さんの態度からわかった。
夫婦として強制しないだけじゃなく、挨拶や食事といったコミュニケーションすらもとる気がないということ。
……本当に、形だけなんだ。
親に言われたから籍を入れて、同じ家に住むだけ。
それ以上の存在は、私には求めていない。
さすがに、ちょっとヘコむかも。
……こんなんで、これから先の生活大丈夫なのかな。
おいしいご飯を目の前に、口からは「はぁ」と深いため息がこぼれた。