愛艶婚~お見合い夫婦は営まない~



それから、翌日もその翌日も家には増田さんや他の仲居さんたちが来て、家事を全ておこなってくれた。

そのため私は朝から晩まですることもなくただぼんやりするだけの日が続く。



名護さんは朝早く出て夜に戻って、時々深夜にまた仕事に出たりもしているようだ。

副社長とはいえ、旅館の責任者となると不規則になってしまうみたいだ。



そんな彼とは会話をしない、それどころか顔を合わせることもなく……。



「もう限界……暇ーーー!!!」



この家に来てから5日後の午後。

自室の窓からよく晴れた空に向かって叫ぶと、木々に止まっていた鳥がバサバサーッ!と飛び立っていった。



さすがにもう無理、限界!

毎日毎日暇すぎる!



昔から家のことは自分でしていたし、学生時代はバイト代わりに旅館を手伝っていた。

就職してからは毎日忙しなく働いていたし、こんなになにもせず毎日過ごしたことがない。

そのせいか、することがなさすぎてつらい。



遊びに行こうにも友達もいないからひとりだし、駅まで行こうにも車が必要だ。

私が下手に動こうとすると仲居さんや名護さんの部下らしき人たちが来てしまうし……。



「どうしたらいいの……」



ため息をつきながら、とりあえず一階に降りる。

リビングでまたテレビでも見るか、なんて考えながら部屋に入ると、ソファに座る名護さんの後ろ姿が見えた。



あれ、名護さん?

この時間は仕事中じゃないのかな?


不思議に思いながら近づくと、ソファに座った形のまま彼は睫毛を伏せ眠っていた。


  
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