愛艶婚~お見合い夫婦は営まない~
「そう、ですか?」
「ええ。あの無愛想堅物副社長には奥様のような明るい方がよくお似合いです!」
『無愛想堅物副社長』……そのまますぎる呼び方に思わず「ぷっ」と吹き出してしまう。
私のその声を聞いて、増田さんも笑顔をこぼす。
「それに副社長からお聞きしました。家事は自分でやるから手伝わなくていい、って」
「はっ!すみません、決して増田さんたちを邪険にしていたわけではなくて……!」
「ふふ、わかってますよ。それにむしろ安心したんです」
安心?
その言葉の意味がわからずにいると、増田さんは言葉を続ける。
「副社長から『ふたりで暮らしをつくっていきたいという妻の希望を聞いて、自分もそう思った』と言われて……この方にも誰かの意見に寄り添う、人らしいところがあったんだなって」
その言葉から察するに、いつもの名護さんはひとりで判断し誰かに頼ることはないのだろう。
若くして副社長という立場で、さらにあんな大きな旅館の責任者。いつでもついてくる次期社長という呼び名。
それらのプレッシャーの中、甘えず頼らずいたのだと思う。
そんな彼が『自分もそう思った』と心を寄せてくれている。
それが、とてもうれしい。
「夫婦なんて何年経っても未熟で未完成なものです。だから、向き合って話合ってたまに喧嘩して、そうやって知っていけばいいんです。
この広い世界で出会って、縁あって結ばれた家族なんですから」
笑顔のまま、増田さんが言ってくれたその言葉に、先ほどは落ち込んだ心が一気に晴れるのを感じた。