愛艶婚~お見合い夫婦は営まない~



そんな中、昔からの常連客で大手リゾート会社の社長を務める男性から買収の話を持ちかけられたのだという。



買収といっても旅館の形や名前はそのままで、リゾート会社のグループに入るだけ。

経営権はリゾート会社のものになるけれど、『昔から通う大好きな杉田屋を悪いようにはしないから』と言ってくれたそう。

冬子さんたちもそういうことならと契約を結んだのだという。



ところが、その代わりにと社長さんから言われたのが『杉田屋の娘さんをうちの長男の妻にほしい』という条件だった。

なんでも、社長のひとり息子は将来会社を継ぐべく仕事を熱心にするあまり一向に浮いた話がないらしく、ならばいっそと社長さんが結婚相手を用意することにしたのだそう。



その話を申し訳なさそうにする冬子さんに、当然戸惑ったけれど最終的に私は了承した。



恋人はいない、好きな人もいない、仕事もない。

そんな今の状況の自分に、結婚という選択肢もありかなと前向きに判断した結果だった。



……それに、これでやっと恩返しができる。



  
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