愛艶婚~お見合い夫婦は営まない~
冬子さんと旅館の入り口へ向かおうとしていると、緑色の着物に身を包んだ、ここの仲居であろう若い女性が近づいてきた。
「杉田様ですね、お待ちしておりました。こちらへどうぞ」
彼女の後に続いて建物へ入って行く。
木の格子がついた引き戸を開けると、そこには真っ赤な絨毯の敷かれたフロントがある。
チェックイン時刻前のようで、お客さんはまだいない。
「いらっしゃいませ」と落ち着いた声で出迎えるフロント担当の男性に会釈をしながら通過すると、その先にはロビーがあった。
ローテーブルと高級感のあるソファが置かれたロビーは壁一面がガラス張りとなっており、目の前に芦ノ湖がどんと広がっている。
どこを見ても高級感にあふれた建物内に、私は圧倒されつつ歩いて行く。
外観もすごかったけど、さすが、内装も豪華だ……。
それもそのはず。ここはあの『名護グループ』の本館なのだから。
この度私が嫁ぐことになった名護グループリゾートというのは、超大手リゾート会社だ。
本社は都内にあり、一番有名な本館がここ箱根。
国内外の観光地にホテルや旅館を持っており、日本らしい和風旅館から都会的なラグジュアリーホテルまで、どこも日常を忘れさせるようなリゾート感と完璧な接客で満たしてくれると満足度の高さで有名だ。
近年は『老舗の伝統を守るため』と、各観光地でうちのような経営の厳しい旅館などを買収し、立て直すという取り組みも積極的に行っているそう。
……というのが、今回ネットで調べた情報。