にびいろのなかのひかり 鈍色の中の光

「遥」


「ん?
まだ、つづき?」




「言ってなかったことがあった…」


原さんの声のトーンが変わった

真剣だった



「…いい事?…嫌な事?」


少し不安になった




「んー、どぉだろ…」




「なに…?」




「美波って…
義姉と同じ名前なんだ…」




「え…」




「だから、美波さんて呼ぶたびに
思い出してた…

レンタルショップの会員カード
預かるたびに思い出してた…」




「今も…思い出す?」




「んー…
今は、美波さんは美波さん

でも、できれば
遥って呼びたかった」




「呼んで…
遥って、呼んでください
私も、呼んでほしかった」




「遥…
…くすぐったい?」




「うん…
耳の後ろ辺りが、くすぐったい」




「この辺…?」

そう言って原さんは

私の耳元に唇を付けた





「遥…
好きだよ…」





くすぐったかった耳が


熱くなった





< 343 / 555 >

この作品をシェア

pagetop