浅葱色の約束。─番外編─




巧者の化粧師さんを目の前にしたのは初めてだった。

まるで花街にいるような大人の女が茶室に2人構えていて。

肌には白粉が塗られ、目尻を象徴させる赤色、綺麗にグラデーションされた紅。


艶やかな風貌の女達に同じようにされてしまった私は。



『中々様になってるんじゃないかい。あんた、土方さんの奥さんなんだって?こりゃ驚くこったね』



肌が白いからと、白粉は逆におかしいと言ってそれは塗られなかったものの。


目尻、頬、唇には赤が追加されて、普段簪でくくり上げられている髪は斜めに流すようにその浅葱色で留めてある。

そこから露になるうなじに風が触れてくすぐったい。



『土方さんの反応また教えてね梓ちゃん!』


『今日は寝かせてくれないんじゃないかい?』



クスクスと笑いながら噂好きな女達が去って行ったのは、先程。

いつもよくしてくれるご近所さんなのだけど、こうしてからかわれてしまう毎日だった。


そんな彼は今日はお休み。


家でまったりしてくれてるかなぁ…と思いつつも、それでもあの人のことだ。

きっと机に向き直っているに違いない。


……なんて思いながら気付けば玄関の前。



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