浅葱色の約束。─番外編─




───ガラガラガラ。


静かに開けて、ピシャンと閉じる。


どうやらまだ気付かれていないらしい。

どんな反応をしてくれるか、心臓はドキドキとうるさかった。



『どうしたら大人の女性になれますか…?』



お化粧をしてくれた女に、私はそんなことを聞いていて。

慣れた手つきで筆を動かす指に視線が奪われつつ、その先の女は妖艶に微笑んでくれた。



『なんだい?あんた、大人になりたいのかい?』


『は、はい…』


『そりゃ簡単だよ。女になりゃいいのさ』



それが彼女からの答えだった。

正直よくわからない。

だからこそもう少し聞いてみれば、分かりやすいように追加してくれた。



『男を頼って守られる女になればいいのよ。十分に甘えて気持ちを伝えるの、それだけで男にとって一番の幸せさ』



それはある意味私にとって一番に難易度の高いもの。


女になればいい───だなんて。


土方さんの中で私は男の子であり、まだ女になりきれていない少女のようなものだと思うのだ。

大人というものがまだ分からない。

そう見て欲しいのに、それでも私はまだ足りな過ぎる。


でも鏡に映る今の姿を見たとき、私は自分を初めて“女”だと思った。



< 178 / 198 >

この作品をシェア

pagetop