呑みますか、呑みませんか。


 新しいグラスに注いでもらった、先ほどとは別の日本酒を嗜む。


「たしかに。甘いです」


 いや、甘いといえば語弊があるか。

 チョコレートみたいな甘さではないから。


 ただ、辛口を飲んだあとなので、素直にそれが甘いと感じた。

 それに香りも新しい。


「これなら飲みやすいですね。きっと女性でも」

「それは危ないやつだな」


 クスッとタマキさんが笑う。

 その顔カッコよすぎるのですが。


「危ない、ですか?」

「飲みやすいからといって。酔いにくいわけじゃない」


 そうだよね。

 いけるいける、と飲むとあとが大変なのかもしれない。


「日本酒飲んでる女の子みるの。初めて」

「えっ」

「どちらかというと、ずっと上の年代の、男が好みがちというか」


 それはオッサンっぽいって言いました?

 でも飲ませてくれたのタマキさんですからね!?


「まあ。偏見なんだけど、こんなのは」


 そうですよ、女の子だって日本酒飲んでいいんですよ。

 カクテルとか飲む方がかわいいかな?

 映える……かもしれないし。


 でも、わたしは、未知との遭遇にわくわくしています!


「いい飲みっぷり」


 はあ。美味しい。

 ……サヨナラ女子力。


「惚れるわ」

「……っ、」

「次は。どれにする?」


 漢気を感じられている……のか?


「俺もそんな風になれたらな」


 憧れられている!!


 職場では、こちらが尊敬することしかないのに。
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