呑みますか、呑みませんか。


 ――――!?


「無防備な君を。一方的に」


 なに、その、シチュエーション。

 わたしは自分からお酒を飲んだんだよ。

 やめようかって気を使ってくれたのに続けていいって答えたのもわたし。


 抵抗したくてできないんじゃなくて、ただ、力が入らないだけ。


「ゾクゾクする」

「へん……たい」


 ドキドキしてヤバい。

 初めてでも、ないのに。


「俺が? ヘンタイ?」


 まったくその気がなかったわけじゃない。

 所詮は男と女。

 それもお互い独り身の成人で。


 気になる異性と二人きりで一夜を共にすれば、十分起こりえる話で。

 願ってもない展開で。

 しかし付き合おうと決めたその日のうちに、こんなことになるなんて。


 数年前のわたしからは考えられない。


 あの頃は、うぶだった。

 恋人と二人で会うのすらどこか恥じらいがあって。


 何ヵ月かかった?

 初めて肌を重ねるまでに。


 直前までいって、躊躇って、終わったこともあったはず。


 それが


「……よく言うよ。俺を受け入れる準備始めておいて」


 ――――オトナって、すごい。
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