呑みますか、呑みませんか。

 ――――落ちてくれる?


 タマキさんの仕事モードとプライベートのギャップに落ちそうだ、という失言をわたしがしたとき。

 落ちて、的なことを言われた。

 既に落ちかけです。……が。


「海鮮丼といえば。日本酒が合うイメージあるんだよな」


 あれ冗談だったんですね!?

 本気にして一人で盛り上がらなくてよかった……!


(それでも少し、期待しちゃってたりしてます)


 ただの同期から、親しい同期に昇格したあと、恋仲に進展する可能性とは。


 暫く恋をしていないから、恋のやり方を忘れてしまった。


「わたしもそんな印象あります」


 わたしがこの人に多分に魅力を感じているのは事実で。

 そうなりたいって思ってしまっているのもまた認めざるを得なくて。


 端正な顔立ちのスマートなビジネスマンが、まもなく嗜むのは、二十歳以上しか口にできないものなのに。


「今日は用意してないけどワインも攻めてみたい」

「ワイン、あまり飲んだことないです」

「赤と白で違うのはわかるけど。年代や銘柄でそこまで旨味が変わるのか気になるな」


 好奇心旺盛な少年みたいで、かわいい。


 こんなに近くにいて、好きにならないわけ……ない。
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