忘れるための時間     始めるための時間     ~すれ違う想い~
自分の気持ち ~高校時代~

# 光side

#光side

朝練のあと一旦教室に上がりかけたけど、携帯を部室に忘れてしまったことに気づいた。
「あっ!携帯!…悪い、達也先行っといて~俺部室に携帯忘れた!」

「マジ?もう遅刻じゃ遅刻!先行くで!」軽く手を上げて達也は階段をかけ上がって行った。


あわてて部室に戻り校舎に入る頃にチャイムが鳴った。(やべ~!遅刻じゃあ)焦って階段をかけ上がる。
やっと四階までたどり着いた。一息ついてから自分の教室がある右に曲がろうとしたとき

ガタッ という音と キャー という叫び声が左側の教室から聞こえた。左側には1組から3組の教室がある。

「みぃ-!!」と名前を叫ぶ声が聞こえた。

胸がドキッとした(後藤さん?!)そう思ったときには1組に向かって駆け出していた。

1組の教室の扉を勢いよく開けた。チラッとこちらを見る生徒もいたが、ほとんどの人が倒れている後藤さんに集中していた。遠巻きに囲む生徒達、泣きながらすがりつく本岡、肩をゆすり意識の有無を確認している担任の先生… それらが目に入り、息が止まるかと思うほど不安になったが体は勝手に動いていた。

「俺が運びます!」人だかりを掻き分けて後藤さんのところまで行き脇の下から背中に手を差し入れ膝の裏をかかえて抱き上げた。
細くて小さい後藤さんの体は軽く、顔色は悪い。意識も無いようで不安でからだが震えた。
それでもしっかりと抱きしめながら1階にある保健室に向かい駆け出した。
「先生は保健室に電話しておく!」
担任の先生がそう呼び掛ける声が背中から聞こえた。

周りから「キャー」とか「何で永井君が?」とか「後藤さん大丈夫かな?」…とか、そんな声が聞こえた気もしたがそれどころでは無かった。


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