住みますか、住みませんか。

「や、やっぱり。言わなくていい!」

「なんで?」

「そこまで聞いていいか。……わからなくなってきた」


 所詮は、恋人。

 ひとりの男と女。ただの人間。


 知らない方がいいことって、ある。

 恋人になれたからといって洗いざらい聞き出すべきではない。


 聞いて正直に話してもらった結果、傷つくかもしれない。

 わたしを傷つけたくないチヒロくんに嘘をつかせてしまったり、余計な気を使わせてしまうかもしれない。


 そういうお店が好きで実は通っている、などと暴露されたら立ち直れないかもしれない。


 だけど、気になる。

 なにこの矛盾。


「羽鳥さんになにか吹き込まれたな」

「……流れで行くことがあるって」

「そういう誘いが。ないことも、ない」


 そうなんだ。

 あるんだ、声をかけられること。


「だけどそこは。俺は、線引きしてるよ」


 ――――!


「できる付き合いと、できない付き合いは、ある。考えて、選ぶようにしてる。たまちゃんも。仕事仲間や友人からの誘いを、一緒くたになんでも受けたりはしないだろ?」
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