傷ついた羽根でも空へ
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父親も母親も嫌い。大っ嫌い。22歳になった今でも、この感情が消えることはない。「嫌い」という言葉さえ、空々しく感じてしまう。それはきっと、私の中であの人達が「どうでもいい存在」になっているということなのだろう。私は今まで、あの人達の人生に付き合ってくるしかなかった。一人では生きられなかったし、周りもそれを望んでいたから…。だけどあの人達も、周りの大人達も、自分達の主観を私に押し付けただけで、誰も、私の心の羽根が傷つき、痩衰え、はばたけなくなっていくことに気付かなかった。
 ずっと心の隅にあった言葉がある。この22年間、絶対に口にしなかった言葉だ。口にしてしまったら、自分の存在が否定されてしまうようで怖かった。自分が今生きていることが申し訳なくて、自分の命がこの上なく薄っぺらいモノになってしまいそうで怖かった。ボロボロになってもまだ、辛うじて動いていた心の羽根を失ってしまいそうで怖かった。私だけは、自分の存在を認めていたかった。だから、自分を守るために決して口にしなかったし、時々心の隅から顔を出してきても、また心の隅へとグイグイと捩込んだ。
「私は望まれて生まれてきたの?私が生まれた時、あなた達は幸せだった?私を愛しいと思った?なんで私を捨てたの?私は必要とされてなかったの?私が生きているのは何の為…?」
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