冷酷陛下は十三番目の妃候補に愛されたい
まばたきをした後、くすくすと肩を揺らす彼。
「あの、レウル様?」
「笑ってすまない。ランシュアはどこにいても変わらないなと思ったんだ」
目まぐるしく変化する戦況、倒れゆく仲間。
誰もが自分の首を狙って攻めてくる中、心が休まるひとときなんてなかったのだろう。
ほんの少し。今だけでも楽になってほしい。
国を背負って戦う以上、城に帰るまでは婚約者に戻らないという認識は通じているようで、距離感も、ふたりを包む空気も、甘くはない。
だけど、お互いの存在が支えであると口にしなくても伝わってきた。穏やかな心音が心地良くて、普段よりも彼の存在を強く意識する。
危険と隣り合わせの日々。夜が明ければ、また遠く離れた場所へ行く。この戦いの終わりはどこにあるのだろう。
「ランシュア」
その声に顔を上げると、綺麗な青い瞳と視線が合った。
差し出されたのは繊細な装飾が施された懐中時計だ。いつも公務に持参していた品である。
「君に持っておいてほしい。ひとりでどうにもできない危機に陥ったとき、蓋を開いてくれ」
「蓋を、ですか?」
「そう。きっと役に立つだろうから」
私に握らせるように包んだ大きな手。触れた指は冷たかったが、その仕草はひどく優しかった。
まるで分身を預けられたかのようで、懐中時計を見るたびに彼を思い出してしまいそうだ。
「ありがとうございます。大切に持っていますね」
「そうしてくれ。本当はずっと側にいて、守ってやりたいんだけどな」