冷酷陛下は十三番目の妃候補に愛されたい
包み込む手に、少しだけ力がこめられた。
さらりと告げられたセリフに胸が鳴る。
まずい。意識しないように気をつけていたのに、今のは反則。不意打ちの口説き文句に絶対頬が赤くなっているはずだ。
周りが暗くて良かった。焚き火に照らされなければ、顔を見られなくて済む。
「そろそろおやすみ、ランシュア。明日に疲れを残してはいけないから」
「はい。レウル様もちゃんと休養をとってくださいね」
別れた後、テントに戻る途中でこっそり振り返ると、頬杖をついて焚き火を眺めながら真剣に何かを考え込む横顔が見えた。青い薔薇と形容される陛下の顔に戻っている。
今後の戦略か、はたまたそれ以上の策略か。
弱さを見せずに進み続ける姿は、不安なんて微塵も感じさせないほどの安定感があるが、多くの人の命運を背負う重圧は計り知れない。
どうか、この戦いに終わりがきて、アルソートに平和が訪れますように。仲間がひとりも欠けずに、城に帰れますように。
そんな願いがこみ上げて、胸がきゅっと締めつけられる。テントに戻って横になっても、その日はなかなか寝付けなかった。