冷酷陛下は十三番目の妃候補に愛されたい
涙が溢れて止まらなかった。二度と目を覚さないかもしれないと、心のどこかで不安が拭い去れなかった。
奇跡だ。奇跡が起きた。
駆けつけた医者や看護師も安堵している。アスランとドレイクさんは小さく泣いていた。
あぁ、また会えた。
やっと待ち望んでいた彼が帰ってきたんだ。
それからの回復は順調だった。輸血の副作用もなく、傷の治りも早い。
やがて容態が落ち着き、レウル様は城下町の大きな病院に移された。その頃には自力で食事が取れるほどに回復しており、指示を出したり、文書を作成する仕事をこなすようになったのだ。
面会に来たアスランやドレイクさんとも話し込んでいる様子で、仕事をするときは、私はなるべく席を外すように心がけていた。政治の話をしている姿は真剣で、ずっと集中力を切らさないでいる。
しかし、ふたりきりの陛下は格別甘い。
国境の町の病院では体調が安定するまで気の抜けない状態だったし、落ち着く余裕もなかったが、ここでは個室ということもあり、護衛としてつく騎士達も気を利かせて外に待機したりする。
体を起こしてベッドの背にもたれ、ずっと手を握って離そうとしない。
「あの、レウル様」
「ん?」
「このままお話するんですか?」
「ああ。ふたりでいる間は、ランシュアに触れていたい」