冷酷陛下は十三番目の妃候補に愛されたい


一ヶ月以上会えていなかった反動が大きいらしい。綺麗な顔がじっと見つめてきて落ち着かないから困る。

その時、ふとあることを思い出してポケットをさぐった。


「そうだ。ずっとお返ししようと思っていたものがあるんです」


取り出したのは懐中時計だ。国境の森で助けてもらったのが遠い昔のように思える。

鉱石の光に気づかれなければ、きっと未来は悪い方へ変わっていただろう。


「あのときはありがとうございました。なんとお礼を言えばいいか」

「礼を言うのは俺の方だ。撃たれた後の話をアスラン達から聞いた」


控え室でダルトンさんに啖呵を切ったことを言っているのだろうか?今思い返せばとても恥ずかしいセリフを口にしたような気がする。


『最後まで国のために戦い、未来を担う子どもに命をかけた彼が裏切り者として死ぬのなら、私は裏切り者に添い遂げた共犯者として国の歴史に悪名を残します』


あれはもはや、公開プロポーズか?

婚約者なのだから不自然ではないだろうが、陛下の妃として添い遂げる意思があるとはっきり第三者の前で断言したのは初めてだ。

自分の気持ちを自覚した後は、抑えるのが難しい。

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