冷酷陛下は十三番目の妃候補に愛されたい
好きとは一言も言っていないのだが、目の前の本人はニコニコと嬉しそうで、あの場にいた臣下達がどのように伝えたのか気になって仕方がなかった。
いずれ、自分の言葉でしっかり気持ちを伝えなければ。
ここは病院だし、部屋の外には護衛の騎士も控えている。おまけに本人はまだ完治していないのだ。落ち着いてから話す機会をもらおう。
こっそり“準備”もはじめている。
「ランシュア?」
「あっごめんなさい、考え事をしていて」
「いいよ。君が側にいるだけでも幸せだから」
息をするように甘いセリフを口にする陛下。
ブランクがあるからか、恥ずかしさのあまり、まっすぐ見つめ返せない。
「もしかして、緊張しているのか?」
「……はい」
「ふふ。素直だな」
サイドテーブルに懐中時計を置いた後、レウル様は扉の方を見やり、そっとささやいた。
「ランシュア。内緒話をしようか」
「聞かれてはまずいお話なのですか?」
「大丈夫だ。こっそりすれば気づかれない」
軽く手招きをされ、おずおずと近づく。
何かの相談?それとも、まだ秘密にしてきた過去があるのだろうか?
しかし、緊張しながら構えた瞬間、首元を指が這う。
「ひゃっ!?」