冷酷陛下は十三番目の妃候補に愛されたい
全身の体温が上昇する。
なにをさらっと口走っているんだ、あの人は。私のいないところでそんなやりとりが繰り広げられていたなんて。
書斎で陛下の秘密を共有してから二週間。あの日を境に彼は態度を一変させた。
姿を見かけるたびに話しかけてきて、庭掃除や応急処置の勉強中も近くでニコニコ眺めてきたりする。さらに、公務に出る前は必ず部屋に寄って挨拶をして、帰ってきたらすぐに顔を見にくるのだ。言い表すならば“懐かれた”に近い。
もともと決めた忠臣しか側に置きたがらない上に基本的に相手を信用しないスタンスの彼は、誰とでも一定の距離を保った接し方をしていた。
それが、自分のテリトリーに入るのを許した途端にこれ?
しかしまだバレていない。一番変化が大きいのは、ふたりきりのときであると。
レウル様は人前で口説いたり触れたりはしないものの、周りに誰もいないところではとことん甘かった。
以前は隣に座るのもある程度の距離をとっていたが、今では肩が触れる近さにまでなっているし、会話している間も綺麗な顔がじっとこちらを見つめてくる。
『あの、なんでしょうか?』
『ん?可愛いなと思って』
『からかうのはやめてください』
『ふふっ、からかってないよ。出会った頃から思っていたから。でも、最近はこんなに可愛かったかなぁってよく考えるようになった』