冷酷陛下は十三番目の妃候補に愛されたい
盲目だ。恋の病?嘘だろう?
それ以上は心臓がもたないからやめて!と叫べたら楽なのに、向こうはとても楽しそうで怒るわけにもいかなかった。
正式に婚約者として迎える意向はまだ公表していないようなので、期待の眼差しでこちらを見るエルネス大臣をなんとか誤魔化す。
「特に心当たりはありません。ただの気まぐれではないでしょうか?」
「ふむ。ランシュア様がそうおっしゃるなら、首を突っ込むのも野暮ですね。失礼いたしました」
苦し紛れだが凌げただろうか?
納得した様子のエルネス大臣は数秒考え込んだあと、ぽつりと呟く。
「陛下にも側にいてくださる方ができれば、先代の王も安心なさるでしょうに」
城の肖像画が頭に浮かんだ。
多くの人に尊敬され、民を背負って革命を成し遂げた偉人。今のアルソートの基盤を築いた功労者。
私自身、英雄だと思ってきたが、愛人の話を聞いてからは悪いイメージを抱いてしまった。
「あの、レウル様のお父さまはどのような方だったんですか?」
長く仕えてきた大臣に尋ねると、「陛下のお父さまですか?」と数回まばたきをして腕を組んだ。
「彼はとても勇ましく心の優しい方でした。そこにいるだけで周りを明るくする……そう、まるで太陽のような」
「太陽?」