【完】白坂くんの溺愛は危ないことだらけ
「凪ってば、どこ行くの~?」
「ん。この子構いたいの」
私……?
不意にあの夜の出来事が脳裏に蘇って、ドクンっと心臓が跳ねた。
てか……今なんて言った?
「隣のクラスの柳涼太くん。だよね? 水瀬の腐れ縁」
「え……そ、そうだけど」
なんだ……あの夜のことじゃないのか。
「いつもふたり揃って学校に来て、仲良く帰ってるよね」
「子供の頃からそうだったから……」
「知ってるよ? で、その涼太くんから俺のこと何か聞いてない?」
知ってるって、どうして……?
「白坂くんのことを? 聞いたこと……ないけど。涼太とはいつも、ゲームの話ばっかりだし……」
「水瀬からは話さないの? 俺のこと」
「……っ、は、話す、わけないじゃん」
あの夜のことを言ってるんだと思った。
だから私は、それ以上白坂くんを見れず、慌てて澪ちゃんの手を引っ張って教室を出た。
「───そろそろ本気出さないとダメか」
白坂くんがそんなことを言ってるなんて、当然私には聞こえていなかった。