【完】白坂くんの溺愛は危ないことだらけ
「そうか。凪、お前は本当に聞き分けが悪いね? 一度再起不能にしてやらねぇとわからないのかな?」
「っ、」
妖艶(ようえん)に微笑むと、その男の右手は、白坂くんの喉元を潰す勢いで鷲掴みにした。
それは、白坂くんの足が地から浮くほどに。
ヒッ……。
このままだと白坂くんが死んじゃうんじゃないかってたちまち怖くなった私は、お母さんに知らせようと家の中に飛び込んだ。
お母さんが「警察警察!」と電話を取る。
白坂くんが心配になって、私は恐る恐る玄関のドアから顔を覗かせた。
だけど、そこで目にした光景は、衝撃的なものだった。
数人の男達は、脇腹やみぞおちを抑えて呻きながら地べたを這いずり回っている。
白坂くんの喉元に手をかけたあの髪の長い男の姿も、停車していたバイクも忽然(こつぜん)と消えていた。
路肩にはエンジンのかかった黒塗りの車。
慌ただしく誰かが乗り込んでいくのが見えたと同時、車は前進した。
どうなってるの……?
恐怖と混乱に圧倒されていたその時。