エリート検事はウブな彼女に激しい独占愛を滾らせる

「うるさい、俺に指図するな」

 立ち上がった時田が女性の顎を乱暴に掴み、「そもそもお前のためにしてやったことだろうが、舞美」と凄む。

 舞美さんはぷいと顔をそらしたが、時田はまだ気の食わない様子で彼女の体を突き飛ばした。

 よろめいて床に倒れ込んだ彼女めがけ、時田が足を振り上げる。私は思わず立ち上がり、舞美さんに覆いかぶさるようにして体を入れた。

 ――直後、背中に鈍い痛みが走る。

「うっ……」

 どうやら時田に思い切り踏みつけられたようだ。

 顔をゆがめて痛みに耐えていると、舞美さん驚きに目を見開きながら、私を見つめて言う。

「どうしてかばうのよ……。あなたは津雲さんに近づく私のこと、嫌っているはずでしょう?」
「どうして、って……。たとえ嫌っている相手だからって、目の前で理不尽に暴力を受けている人を見過ごせるわけないでしょう!」

 舞美さんは私の言葉に息を呑む。そして瞳に涙を浮かべながら、下唇をぎゅっと噛みしめた。

「ごめんなさい……」

 そうひと言謝ったかと思うと、彼女の口からは次々に言葉があふれた。

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