エリート検事はウブな彼女に激しい独占愛を滾らせる

「津雲さん?」
「……まだ、ここにいてくれ」

 別に、今すぐ帰ろうとかそういうわけじゃなく、ここからでも見えるキッチンに移動しようとしただけなのに……。寂しげな目をして私を引き留める彼に、母性本能がくすぐられる。

「今日はなんだか甘えん坊ですね」

 私はいったん座り直し、手首を掴んでいた彼の手をそっとほどくと、両手で包み込んでぎゅっと握った。津雲さんが安心したように、表情を緩める。

「……オンとオフ、だ」
「えっ?」
「職場では、意識的に感情を排除するようにしている。……そうしないと、ふたりきりで長時間仕事をする状況に耐えられないからな」

 時折苦しげに熱い吐息をこぼしながらも、正直な胸の内を告白してくれた津雲さん。

 職場ではポーカーフェイスの彼も、私とふたりきりで仕事をするという状況に、なにも思わないわけじゃなかったんだ。

「あの……それならあれはなんだったんですか? 仕事納めの日……キス、しようとしましたよね?」

 結局キスはしなかったとはいえ、あれは、オンの彼がする行動ではない。しかし、こっちはその思わせぶりな態度にどれだけ心乱されたことか。

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