ウブで不器用なお殿様と天然くノ一の物語
例えばね、どうしても過去が許せなくて、
灯里ちゃんが彬良くんを振ってしまうとする。
そうしたら、お互い、そこから道が分かれるのよ。
振ったところが分岐点なの。
この先、2人の未来が交わることはもうないわ。灯里ちゃんは他の誰かと出会い、その人と結婚するでしょう。
彬良くんも…まあ、ヘタレだから、誰かが世話したお見合いでもして、いずれは結婚するわね。
この病院の次男だもの。
引く手数多よ。
それに、お顔だって、お義母様に似てイケメンさんだからね。
すぐにでも話はやってくるわ。
そしてその人と結婚して、いずれは子供も出来て…………。
…それ、全部、今ここから始まる未来として
受け入れられる?」

いやだ!
無理だよ、そんなの…………

「私もね、修司さんの過去に嫉妬した。
でも、今、そしてこれから先の修司さんまで、
他の女に譲ることは出来ないって思ったわ。
私はね、我儘なの。強欲なの。
修司さんの“これから”が全部欲しい。
それが私にとっての、本当の“好き”だと思う。」

そう言った麗先生の顔は、自信と愛情に満ちていた。

「灯里ちゃん、今、ここで道を間違えないで。
2人のこれから歩んでいく道は、一つよ。」

そうだ。
意地張ってたらダメだ。
昨日、彬良も言ってくれたんだった。
これからはずっと一緒にいたいって。

「ほら、泣かないの。
大丈夫だから。
少しだけ、素直になりなさい。
そしてね、彬良くんをゲットしたら、
もう絶対、余所見はさせないの。
うーんと束縛してあげなさい!
きっと喜ぶわよー?」

「フフフ……
はい。そうします。」












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