ウブで不器用なお殿様と天然くノ一の物語
♪ピコン

『彬良ん家は?』

…っ‼︎‼︎
そうだった。
昨日来たんだから可能性はある。
俺は自宅へとハンドルを切った。

通りに面しているマンション玄関付近に灯里を見つけた。そこなら、車で帰って来た俺がすぐに見つけられる場所だ。
ホッと安堵するとともに不安な気持ちに襲われる。
昨日の今日だ。
俺が言ったことへの“返事”をするため、というのが、突然来た理由で間違いないだろう。

駐車場に車を停めて、健心にLINEを送る。

『見つけた』

♪ピコン

『良かった。
何があったか知らないけど、
ちゃんと話し合え。
なんなら一晩中かかってもいいぞ。
母さんは俺から言っとくから。
けど、その場合は返品不可だからな。』

健心…。
出来た弟だ。
有り難い。

『わかった。
返品は絶対しない。』

駐車場側の出入口からエントランスへ出る。
玄関へ出るとさっき待ってた位置に灯里がいた。

「灯里!
お前、探したんだぞ!
健心から連絡があって、心配してる。
スマホ、忘れてきてるぞ。」

「え!
あ、ホントだ。
え、どうしよう。」

思ったより、普通に話せて、ホッとする。

「今、見つけたって、LINE入れたから。」 

「あ、ありがとう…」

ここで話すわけにいかない。

「とりあえず、上がろう。
こんなところで立ち話出来ないよ。」

「……あ、うん。」

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