ウブで不器用なお殿様と天然くノ一の物語
「キスは、じゃなくて!

……たしかに、灯里に彼氏が出来たと思って、落ち込んで、声掛けられたら全部OKしてた。
誰でも良かったから、何にも考えずにOKしてた。

…………でも、誰とも、
キスもその先も…してない。

そんなんだから、すぐ振られて、気づけば元カノって言えるのかわからないような女性は沢山いたけど。
そ、そういうのは、俺には不向きで。
だから、女性との付き合いはすぐ諦めた。
残りの大学時代も、研修医時代も、誰とも付き合ってない。

俺、灯里じゃないとダメなんだ。
灯里がいいんだ。

だから、その……………」

「彬良は……真っさらってこと⁉︎」

うわ!
それ、DTよりも恥ずかしい表現だぞ!

「そうだよっ!
めっちゃ言いたくなかったけど、キスでさえ、灯里としかしたことない。」

「え! でも……
だって……彬良のキス……。」

俺のキス?

「さ、さっきだって、全然違う。
大人のキスだったよ?
院長室でした時から、全然違ってた…。」

「そ、それは!
想いが抑えられなかったんだよ。
好きだって、伝わればいいと思って。

………嫌か? 気持ち悪くないか?
………この歳で…真っさらって………」

「バカ!
そんなわけないでしょ!
もっと早く言ってよ!
逆だよ。嬉しい!
すっごく嬉しいよ!
彬良! だーいすき‼︎」

そう言って俺の胸に飛び込んできた。

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